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高校の卒業式をあと3日に控えた僕、春本海斗は
自分の部屋で大好きな綾辻有栖の小説の新作を読んでいた。
「海斗、居る~?」
そう言って入ってきたのは、年の離れた姉、明日香だった。
「姉貴、人の部屋に入るときはノックしろよ」
「あ、ごめんごめん、オ〇ニーの最中だった?」
「はあ?しねーよそんな事」
全く、女も26を過ぎるとこんなもんなのか。
いや、たまたま僕の姉だけか?
「で、何の用?」
「ん、ちょっとさ、海斗にモニタリングして欲しいものが」
「またか…」
姉は某大手玩具会社の開発員だ。
姉が高校2年の時、遊び半分で特許をとったものが
その会社の常務に気に入られ
卒業と共にぜひうちの開発部にという事で
会社では異例の、初の高卒採用となった。
「俺ももう18だぜ。おもちゃなんて」
「まあまあ、今回のは大人向けだったりするのよね」
そう言ってさっきから左手に持っていた
黒いアタッシュケースの様なものを差し出した。
姉の開発した大人向けのおもちゃ。
文字通り「大人のおもちゃ」か?と訝ってみたが
そのケースの表には「幽霊セット」とある。
「なんだ、ただの着ぐるみってオチじゃないだろうな」
姉は自分の嫌味も聞こえなかったのか
「1週間使ってみて、終わったらレポートよろしくね」
それだけ言って笑顔を見せながら扉を閉めた。
「しょうがないなあ。まあいつものことだけど」
毎度のことながら気が進まないが、一応中身を確認してみる。
ケースを開けると、真ん中に眼鏡、その周りに4つの道具が
スポンジの型にぴったり収まっていた。
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