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次の命へ
実は姉と僕の間には、もう一人兄がいた。
居るのではなく、「居た」のだ。
カレは高校入学と同時にイジメに逢い
姉が特許を取った『どこでもキャッチャ―』によって
隠れていたところを奴らに見付かった。
そう、その道具は探し物を念ずるだけで探し当てつかみ取る道具。
兄はその道具によって奴らに発見され「つかみ取られ」た。
だが、たまたまその道具がつかんだのが首だったために
それが致命傷になり命を落としたのだった。
正直、眼鏡を掛け、家を出た時には驚いた。
まさか自分の兄の幽霊を見ることになるなんて。
あれが兄でなかったら、この道具を信用することもなかっただろう。
それがすでにこの世にいないはずの兄だったから、僕はすぐに信じたのだ。
兄が成仏できない理由も分かる。
でも、恨みとは人間の自己防衛本能じゃないか。
例えば、ライオンに食われたシマウマが
ライオンを呪って成仏できないなんて事になったら
命は巡回しない。
人は感情というモノを持っているからこそ、自らの肉体を守るために
恨みという感情が湧くのだとしたら、すでに肉体を持たない兄に
これ以上に憎しみという感情を持ってほしくなかった。
早く成仏して、次の命に繋がって欲しい。
来世で幸せになって欲しい。
そう思ったから、僕はこの4つ目の道具を使う決心をした。
奴らは許せないけど
恨みからは何も生まれないのだから
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