序章 ~人間ビリヤード~

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「間に合いましたか」 言って、私の方をちらりと見た。 「急に出て行った事、怒らないのですね」 「いや、もう慣れましたし」 青髪の人が苦笑する。 「まぁこんな所だろうなって、その予想の一つにありました」 「それは良かった」 「先生」の方も笑う。 私は置いていかれている事よりも、突然の車と男の人の登場に、ただぽかんとしていた。 「おっと」 青髪の人が、私に気づいて会釈してくる。 二人の格好でだけど、何だかボーカルとギタリストみたいな取り合わせだ。 「この子を予測したんですか、先生。いや、予見したのか」 「ええ。間に合って良かった」 そう言って、二人とも私を見てきた。青髪の人が肩を竦めてくる。 「全く、可愛い子ほど悲劇に見舞われる」 そう言って、次にニカッと笑ってきた。 元から目の細い人だから、常に笑っているようにも見える。笑顔で変わるのは口のラインくらいだ。 「新年で浮かれるのは、成人式の若者だけじゃねぇって事で」 「貴方も騒いだくちのようですけれど」 「あの時は若かったので」
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