序章 ~人間ビリヤード~

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「今だって十分若いでしょう」 「やだなぁ、二十歳がピークですよ。その後は衰えるばかりだ」 「そういうものですか」 「そういうものですよ」 「所で、昨日のあの方が」 「呼んでますか」 「ここに来る途中で、連絡が」 「じゃあ、すぐ行きましょう」 「先生」の言葉を聞いて、青髪の人がすっと助手席のドアを開ける。おちゃらけた感じの人だが、その動作は堂に入っていた。ボーカルとギタリストみたいなのに、社長と執事みたい。 「先生」と言っていたから、もしかしたらそうなのかも。 「ああ、そうだ」 身体をちょっとだけ屈めた所で、「先生」が思い出したように私を見てきた。 「崎伝道(さき・でんどう)です。こっちは改準寺士郎(かいじゅんじ・しろう)」 青髪の士郎さんが、ドアを掴んだままぺこりと頭を下げてくる。 「私は、ーーーー」 自己紹介を受けて、私も名乗ろうとした。 しかしそれを、「先生」が左手のひらで遮る。 「神有月彩女さん」 呼んだのは、一字一句違わない私の名前だった。 名乗ったっけ、私。
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