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なんて。
「……冷めてますかね」
「?」
星夜さんは、頭の上に目一杯疑問符を浮かべているようだった。
どこぞの奥様というよりお嬢様というのが、私が持つ星夜さんの印象にしっくり来た。
冷めている。
星夜さんに聞いても詮無い事だ。だから、自分で勝手に考える。
冷めていた。選ばれない屈辱。将来への不安。それが、私の意思と裏腹に、体のどこかにべったりくっついているようだ。
「……」
シロくんは、私の右手のひらに絶えず頭を擦り付けている。
心地いいか、私の手のひらが。
「冷めてるねぇ」
背後から声を掛けられたのは、そういう時だった。
「いや、醒めてる、と言った方がいいかな」
「あららぁ?」
先に反応したのは星夜さんだった。
私はシロくんに右手のひらを貢いだまま、しゃがんだままで振り向く。
いや、見上げた。
そうしなければ足しか見えなかったからだ。
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