序章 ~人間ビリヤード~

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つまりこの人に殺されたんだろう。 殺されて。 解体された。 「……」 その現在進行な様子を見ていないから、確証はないけど多分そう。犯人はおそらく目の前の人。だから加害者と被害者。 なんで分かるのかって? 持っているからだよ。浴びているからだよ。 白かったであろうシャツと、青かったであろうジーンズ。その人が来ているそれら衣服は、どちらも今ペンキをひっくり返したように赤黒く染まっていた。 右手には大振りなナイフ。 辺りに飛び散っているのは、鮮血。 そして。 被害者を構成していたであろう、中身の欠片達。 「うっ」 再確認したのがまずかったか。 胃の中のものがこみ上げて来た。 私は何とかそれを喉元で止める。苦い。胃液はアルカリ性だというどうでもいい知識が、頭の中を走り抜けていった。 加害者は男。 被害者も男なようだが、確証はない。何でかは察して欲しい。 「……」 考えたり、声を漏らしたり吐きかけたりしている私を、男は無表情に見つめていた。
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