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「随分と余裕じゃあないか、名取君。君達三人が行成に対して犯した罪に関しては、頑として無言を貫いていたのにさ」
「この一件に、俺達は関係無ぇだろ……」
「本を正せば、君達があの本殿に行成を閉じ込めなければ、彼は木箱を動かすこともなく、橘女史が閉じ込められることもなかった。つまり、あの本殿に行成を閉じ込めた君達にも責任があるんだよ」
「そんなもん、そいつが他の方法で脱出するか、大人しく助けを待ってりゃ良かっただけの話だろ。だいたいよ、その橘って奴も、ちゃんと見付かった上にまだ死んじゃいねぇんだろ? いちいち大袈裟に騒いで、ありもしない罪をでっち上げるんじゃねぇよ、九条」
悪びれもせず、そんな言葉を吐く名取に、九条はうっすらと不敵な笑みを浮かべる。
「……君達は、本当に幸運だったよねぇ。行成が自力であの本殿を脱出してくれたお陰で、君達は罪に問われずに済んだんだからさ。いや、本当にラッキーだったよね」
「……? どういうことだ」
意味が解らず、名取が首を傾げながらもそう問い掛けると、九条がその口許をニィ、と歪めた。
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