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あとがき
また、あとがきを書く事になりました。
本作品を読んで、なんだこの変な話は?
と思われた読者が多いと思うからです。
なので、言い訳です。
まずディストピアが舞台です。
のどかな田舎町に軍隊がやってきて、自由が奪われます。
情報が統制され、知りたい事を知る事ができません。
そこには抵抗する人達が居ます。
レジスタンスであったり、非暴力主義の人達です。
エドはどうでしょう?
彼は非暴力主義者です。
ペンの力で戦っています。
しかしそれも焚書(ふんしょ、権力が思想弾圧に本を焼き捨てる行為)により無力感を味わいます。
そこへマークが現れ、エドにまた本を書く意欲が湧きます。
しかし戦況は悪化し、都市爆撃がマーク達の町も襲います。
マークたちの町が爆撃されたのは、上陸作戦の重要地点だったからです。
戦争でお互いの市民を殺しあい、何の罪も無い市民達が犠牲になります。
この辺りは史実がベースです。
都市爆撃というとゲルニカが有名ですが、第二次大戦中連合国軍はドイツへの無差別爆撃を敢行します。
そしてドイツはイギリスに大陸間弾道弾による報復爆撃を行いました。
それがやがて広島・長崎への原爆投下につながるのです。
これらは科学の発展ではなく虐殺でしょう。
では何故エドは未来社会で"自由"が禁止されたと書いたのでしょう?
それは人間の社会が発展する時、自由は抑圧され科学ではそれを補えないと言いたかったからではないでしょうか?
それが発禁にされた理由かもしれません。
しかしエドはマークの「何故自由が禁止されたのか」という問いに答えません。
それはエドにとって"自己矛盾"だからです。
"科学によって自由を手に入れようとする時、自由は抑制される"そのジレンマにエドは気付いていたのでしょう。
これらは私たちリアル世界の矛盾でもあり、克服すべき課題でもあります。
因みに作中のエドの小説は枠物語です。
そしてエドやマークの生きる世界もまた私達の生きる世界にとっての枠物語といえます。
もし老医師が語った未来が今現在だとすると
エドの描いた未来世界は私達が迎えるかもしれない可能性の未来といえるでしょう。
過去の人達を、彼らにとっては未来人である私達が観察し
彼らが夢見た私たちがこれから迎える未来を考える。
そんなお話でした。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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