第一章

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 やがて黒い灰の塊を残し兵士達が去ると、店主はその黒く焦げた灰の中から、まだ燃え残り読めそうな本を探しはじめる。僕もそれに加わった。  店主は言う。「お前さん本は好きかい?」実はあまり本を読むのは好きではなかった僕だけれど、こんな田舎町での楽しみなど本を読む位しかなかったので、「えぇ冒険小説くらいしか読みませんけど」と、答えた。すると店主は、「そうかい、それなら読めそうな本があったら持ってお帰り。奴等発禁本を探すのをめんどくさがって、ありったけの物を全部燃やしやがった! もう奴等の宣伝本しか入荷しないから、ここは店じまいだよ」  僕は焦げ臭い煤けた本の山から何冊かの本を探し出すと広場を離れた。
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