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━━本の世界は現実ではないから安心する。いづれ終わりがあると分かっているから……。
「奈緒子! 帰ろうぜ! 」
毎日毎日女の子に言い寄られながら、彼は私を誘う。一緒にいる女の子と帰ればいいのに。
幼馴染みで、昔から一緒にいるからと律儀に高校生になっても誘ってくる。
「え~、たまにはあたしと帰ろうよ~。葛西さん、毎日ずるい! 」
こうなるから嫌。巻き込まれるだけ。
「もう子どもじゃないのよ。じゃあね」
「おい! 奈緒子! 」
私みたいな地味な幼馴染み(女)に構ってないで、彼女でもさっさと作ったらいい。再度呼ばれても、振り向いてなんてやらなかった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「……あれ? 」
イライラしながら歩いていたら、見知らぬ路地にいた。
「ここどこ? 」
歩調を緩めながら周りを見渡す。すると、一件の古本屋が目に入った。無意識に足がそちらに向かう。
昔から本が好きだった。ライトノベルとか言う小説には興味はない。文藝や純文学といった、本格的なものが好き。
引き戸をゆっくり開ける。ガラガラと、おばあちゃん家のような懐かしい音を立てた。
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