迷いしモノ

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中はどこの古本屋とも変わらない。古い木の棚に並ぶ、古い本たち。……この古い紙の、インクの匂いが堪らない。 有名作家や見知らぬ作家の名前が立ち並ぶ。大半は読み尽くした。見知らぬ作家の、薄い冊子には一体どんなことが描かれているのだろう。 「……お気に召して頂けたかな? お嬢さん」 夢中になっていた私の背中から声がして、ビクッと肩を強張らせた。恐る恐る振り返る。 「びっくりさせたかい? 申し訳ないね。嬉しそうに見てくれていたようで、私も嬉しくなってしまってね」 そこには、不思議な空気を纏った美女がいた。明るい紫のミニドレス調ワンピースが、店の雰囲気に溶け込んでいて絵になっている。 「い、いえ。無言で入ってきてしまってすみません」 「ここは古本屋だから、好きに入って問題ない。……しかし、"売り物"はないがな」 私は思わず瞬きをする。 「古本屋……なんですよね? 」 「ああ、"古い本を置いている店"、だからな」 変な言い回しに首を傾げた。 「では、どんなお店なんですか? 本の宝物庫、ってだけじゃないですよね? 」 「くっ……、あははははははは! 」 心底おかしそうに笑い出す。何故笑われたのかわからず、戸惑ってしまう。
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