迷いしモノ

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「いや、申し訳ない。そんな風に言ってもらって嬉しいよ。私は本を愛して止まなくてね。閲覧は自由なんだ。図書館とでも思ってくれ」 自負するつもりはないが、私も本が大好きで、読んでない本なんてライトノベルくらいしかないほどだ。落差はあれど、この人となら話が合いそうだと思った。 「それで、どう気に入ったんだい? 」 「はい! 大概の名前の知られた作家さんの作品は読んで来ましたが、ここには"知らない作家さん"の作品も数多くあって、どんな世界が広がっているんだろうって考えてしまうくらい! 」 美女は目を細める。 「そうか……。"知らない作家さん"ね。そりゃそうだ。何せ、"世にでなかった"のだから、知らなくて当たり前だ。知っているかい? 文豪と呼ばれた者たちの時代、実は多くの実力派の物書きたちがいたことを。その多くは本を出せないほどに貧困で、文豪と呼ばれた者たちよりも短命だったことを。……ま、すべてではないがね。人によっては酷い人見知りで、外界との接触をしなかったものもいた」 "世はまさに文豪時代"、そんな時代に埋もれてしまった人が大勢いたのは想像に難しくない。
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