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……この女性は言葉を選んでいる、そう感じた。でも、嘘は感じられない。
「安心おし。何も奪いはしないのさ。まぁ、干渉はするかもしれない。それは"邪魔にならない"形で。フィクションでも、ノンフィクションでもおなじこと。美食で偏食な悪魔に協力してはくれまいか」
私は……気がついてしまったかもしれない。けれど、彼女が敢えて口にしないことを口にすることは、憚られた。だったら……。
「……悪意のない悪魔、なんですね? 」
「うん、珍しいだろう? ただ作品を読みたいだけなんだ。過去の作品には限りがある。だから……"お嬢さんは選ばれたんだ"」
え? 選ばれた?
「……悩んでいることがあるのだろう? "恋愛がらみの"、ね」
「れ、恋愛なんて興味ありません! 煩わしいだけです! 」
何で私、こんなに興奮してるんだろう?
「あれ? 私は興味云々は言っていないよ? 恋愛がらみの、と言った。困っているんじゃないのかな? 」
「……確かに困ることはあります。それは……幼馴染みがモテるのが原因です。小さい頃から兄弟みたいに一緒にいたものですから、登校と下校を未だに一緒にしたがるんです。もう子供じゃないんだから、別々だっていいじゃないですか。一緒に帰りたがってる女の子はいっぱいいるんですから」
何故だろう? 初対面なのに、いつも以上にすっきりと話せた。おなじ女性だからかな?
「やっかみをされているのかな? だが、不思議だねぇ? お嬢さんくらいだと、男の子は思春期だと思うのだけど。……なら、尚更その本を持ち歩いてごらん。何かしら変化があるだろう」
私はそのままお店を後にした。……妙に引っ掛かることを言われたけれど、私には関係ないと思いながら。
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