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「都内で爆弾が発見された」
その連絡が入った瞬間、現場に緊迫した空気が走った。全員の視線が報告を受けた隊長へと集まる。
しかし硬直はほんの一瞬だけだった。訓練された機動隊員たちは、即座に声をあげて行動を開始する。
「山本隊員、緊急出動の準備! 川崎と岩谷を連れて至急現場へ! 急げ!」
「了解しました!」
「こちら機動隊、爆弾を発見したとの情報が入りました。最寄りの警察官は至急住民の避難指示をお願いします。また現場には絶対に近づかないでください。現場の住所は……」
「仮眠している奴らを叩き起こしてきます!」
「ライオットとスーツの用意! 場合によっては処理専の重機を出すかもしれない! 整備班に連絡を!」
「もうしてます!」
喧騒による喧騒。しかしその動きは冷静沈着。秩序だった行動の得意な日本人らしい実に見事な緊急対処により、すぐさま出発準備が整った。マニュアルにしたいほどだ。
そして全員が即座に整列し、鋭い目つきで一瞬だけ人員の装備を確認して隊長が号令を発する。
「総員、出動!」
ザッという揃った足音を響かせて機動隊員が現場へと急行する。唸るサイレンと警告のスピーカー。連絡を受けてから到着までわずか17分と半分。
現場に先に到着して様子を伺っていた隊員3名が、本隊と合流すると同時にまとめた報告を隊長へと申し出る。短く敬礼。
「どうだった、山本?」
「はい、爆弾と思しき物体を視認にて確認しました。また、明らかに目立つように配置しており、時限式なのか起爆式なのか判別できず、必要以上に接近しておりません。なので詳しい情報は本隊合流後に行おうと思いました」
「うむ、その判断で正しい。それで、視認した範囲で構わないので情報を」
「はい、爆弾と思しき物体は報告にあった通り、書店の中にありました。堂々と平積みの本の上に置いてあります。大きさはタマゴほどの大きさで楕円形。タイマーもコードも見当たりませんでしたので内部に全て埋め込まれている物かと。手榴弾(パイナップル)にも見えますが、レバーはありませんでした」
「なるほど、妙な爆弾だな……」
隊長は他にも報告を一通り聞いたが、どうにも妙に聞こえた。色々とおかしい部分がある。疑問が絶えない。
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