灰色の夢。

2/2
74人が本棚に入れています
本棚に追加
/618ページ
今朝は哀しい夢を見たいと笑った。 悲壮な自分を嘲笑って。 ―暖かい夢などは要らないのですか。 朝、また光が目に入る事が哀しくて。 終わらない昨日は虚しいだけなんだ。 そう今朝のあたしも、口元が皮肉に望むので在ろう。 …紫煙は哀れな味を燻らせる為。 脳が覚えている、体に染みついて消えない癖。 纏う香りはいつも彼と同じの此の煙草。 …苦い痛み。 カーテンの無いこの部屋は、 朝陽を常に運んでしまう。 逝きたいのですか。 いいえ、失いたいだけだと嘲笑っていた。 剃刀は、だって奇麗な侭ね? 壁に戒められているのだから。 封を切る事も無く。 蝉が唄う前に、愛を唄叫ぶ前に。 世界が赫く染まり逝く、その日迄。 ただ、眠って居たかった。
/618ページ

最初のコメントを投稿しよう!