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6 移る時、流れる事(つづき)
穏やかで、物静かで、落ち着いていて繊細さがあり、普通に家事もこなす。
「なんすか、それ?」
カウンター席に座る俺たちの前で、カウンターの向こうから呟いた店長に
キョトンと彰太が尋ねる。
定休日明けの、火曜日。
今年の入梅以降、はじめての梅雨の中休みにも関わらず
まだ週末まで程遠いこの日は、ひどく暇だ。
それでも夕方頃までは、腹ごしらえをしに来たタクシー運転手数人と
常連さん二人が、わずかに店を賑わせた。
だが、その二人も帰った九時過ぎ、客と呼べる姿はない。
お蔭ですっかり手持無沙汰なあまり、店長が、なんとなくからかってくる。
「爽平の理想の女性」
だがニヤッとした店長に、彰太は、訝しげな顔を俺に向けた。
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