ここはどこ

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膝上まで海に浸かり竿を振った。あまり期待はしていなかったが根気よく待つことにした。 ビンッ! 急に竿が強く引かれ体勢を崩しかける。 (凄い力!これは大きいかも!) 体を反らせ竿を引き戻す。だがそれ以上の力で引っ張られ、またバランスを崩しそうになった。 取り逃がしたくない一心でより強く竿を引く。 すると水中に大きな影が見えてきた。 (やっぱり大物だ!こんなの釣れるなんてツイてる!) それにしては魚の割にその影は歪な形をしている。 とにかく釣り上げようと渾身の力を込めて竿を引くと、水面から出て来たのは魚ではなかった。 それは人の手でそれも無数に腕が折り重なっており、 異形のものだった。 「ギャッ!!」 すぐに釣竿から手を離した。 急いで浜辺に方向転換して逃げようとしたが、 海水に足を取られ転倒してしまう。 (やばいッ!早く海から上がらなきゃ!) ずぶ濡れになりながら必死に浜辺を目指した。後ろを振り返ると無数の手は海を掻き分けて泳ぐようにこっちに向かってくる。 (追いつかれる!) なんとか浜辺まで上がり、フラフラになりながら池まで走った。 息を切らせやっとの思いで辿り着いた。 (ここまでくれば、きっと大丈夫だよね。。) 恐怖でいっぱいの自分に言い聞かせる。 だが暫くするとガサガサと草木が揺れる音が聞こえてきた。その音はどんどん近づいてくる。 (きっとあの手だ!!追いかけてきたんだ!) (でも足が震えて走るのはもう無理、なんとかやり過ごさないと。) 咄嗟に池に入り、大きく息を吸いこみ潜った。 出来るだけ深く潜りいなくなるを待った。 すると頭上が暗くなり、見上げるとあの無数の手が池の縁から覗き込むようにしている。 (ッ!!) (動いたら気づかれる。) はじめは堪えていたが、徐々に苦しくなり我慢の限界に達し息を吐き出してしまった。 気泡が水面に音を立て弾けたと同時に、頭にズッシリとした重量感が。 その手が頭を掴み、凄い力で押し込んできた。 (く、苦しい、やめて) 必死にもがくがその手は頭から離れない。 (息が、、やだ、死にたく、、ない) だんだんと手足に力が入らなくなり、頭が痺れるような感覚に襲われる。 そして意識が真っ暗で底が見えない深い穴に吸い込まれる不思議な感じだった。
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