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「強盗だ!金を出せ!」
僕のおじぃは本屋の店員さんである。
でも、ただの店員さんじゃない。
「ふぉっふぉっ、若いもんは元気があっていいのぉ~」
「っ!このクソジジイ、金を出せっつってんだろ!」
強盗にも屈しない、強い店員さんなのだ。
「はて?耳が遠くてのぉ、もっかい言ってくれんかの?」
「くそっ、こんなクソジジイ相手にしてらんねぇ!どけ!」
僕のおじぃは本当に強いんだ。
ナイフを持った強盗の腕を掴んだ。
強盗はその手を振り払おうとするけど振り払えない。ほらね。強いでしょ?
「このまま帰ってくれんかの?子供もおるのに刃物なんて危ないじゃろ?」
「チッ、今日はおとなしく帰ってやる。次はないからな!」
あれ、強盗が帰っちゃった。
どうしたんだろう?
「ほぉー、これで一安心じゃな」
おじぃが僕を見てにかっと笑う。
でもおじぃが安心してるならいっか。
おじぃの笑うかお、僕は好きだから。
......
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..............
「大好きだったよ、おじぃ」
今、俺は葬式会場にいる。
『おじぃ』は死んでしまったのだ、強かった、優しかった。そんなおじぃが俺は大好きだった。
世界は残酷だ。
大好きなモノでも全て時が連れ去ってしまう。
勿論大好きだった『おじぃ』も。
....
.......
...........
その後、俺は特訓をした。
大好きだったおじぃに近づくために、一歩でも。
なんでこんなことをしているのか。でも、この時間は俺にとって満たされていた。
...
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途中でとある女に出会った。
その女に一目惚れをし、努力の結果、遂にはその女と結婚した。
二人で愛し合った。
そして、子供も生まれた。
今、俺は満たされていた。
....
......
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"わし"に孫ができたらしい。
わしの子供に似て、優しい顔をした孫じゃった。
本当に可愛らしい娘じゃ。
今、わしは満たされておる。
....
.......
.........
わしは『おじぃ』の本屋で働いとる。
孫もたまに遊びに来て、ついには孫に「おじぃ」と呼ばれるようになったわい。
『おじぃ』には近づけたかの?
それはわからぬ。
だが、わしは『幸せ』じゃ。
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