羽ばたこう、今一度

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羽ばたこう、今一度

自分でも、なぜ、そんなところを歩いているのか、よくわからなかった。 何か、とても重大なことがあって、家を出たような気がする。 ちなみに、私の名前は、東堂威。 読みは、たけるだ。よく、たけしと間違われる。孫にも漢字違いの同じ名前をつけてしまったので、ややこしいのなんの。 夕暮れの町なかを歩いていると、初めて京都に来てから、ずいぶん長い年月が経ったのだなと、よくわかる。 昔は風情ある町家のならんでいた街並みも、今やビルとマンションだらけだ。わびしくなったものだ。 そんなことを考えながら、歩いていると、ビルのすきまに本屋を見つけた。こんなところに本屋なんてあっただろうか? そもそも、ここは、どこだろう? 五条にある、うちの近所であることは、たしかなはずだが。 なんとなく、惹かれた。 あの本屋に行ってみたい。 行かなければ後悔する。 誰かに呼ばれているような気すらした。 吸いよせられるように、本屋の前に立った。 古めかしい町家だ。 きっと、古書店なんだろう。 どれどれ。孫の喜ぶような本でもあるだろうか? 孫も大学を卒業する。 推理小説が好きなようだから、昔の探偵小説でも置いてあればいいが。     
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