第二章 遠海(とおみ)

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 生命力にあふれる赤い花を眺めていた藤音は、ふうっと息をついた。  生きていてください、と隼人は言ったけれど。そんな気力さえ失われてしまった気がする。 「ねえ、如月」 「何でございましょう」  「もし死ぬとしても……病で死ぬのであれば、和睦は破れることはないわよね」  日頃は物事にあまり動じない如月だが、この時ばかりは団扇をあおぐ手を止め、思わず叫んでいた。 「何をおっしゃいます⁉  縁起でもない!」  いいのよ、と藤音は力なく微笑する。 「本当なら、わたくしは婚礼の夜に死んでいたはずだった。如月たちにも内緒でこっそり懐剣を隠し持ち、柾の仇を討って自害するつもりでいたの」  初めて打ち明けられた話に如月は仰天した。まさに青天の霹靂である。 「でも、失敗した。殿は言ったわ。自分たちのうち、どちらが死んでも和睦は破綻して再び戦が起きると。だから生きろと。けれど、もう疲れてしまった……」  我が身の迂闊さを呪いながら、如月は寝床に横たわる藤音を凝視した。
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