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【目覚め】
看護婦が病院の廊下を歩いていると、ふと落ちている写真に気付く。
「あら誰の写真かしら?」写真を拾うと看護婦は、とりあえずカルテの間に挟んだ。
病院のベッドで、男は眠っていた。久野はダイビングをしていた時の事故以来眠ったままだった。
「久野さん検温しますよ~」と看護婦が近付いた時、カルテに挟んであった写真が寝ている久野の上に落ちた。
その時、久野は微かな光を見つけた。
その小さな点の様な光に近付いて行くと、久野の見た事もない光景が広がった。
気付くと周りは火の海だった。
遠くで子供の泣き声がする。
火を掻い潜り泣き声の方へと進むと女性が倒れている。
その側で子供が泣きながら立ちすくんでいた。
女性に駆け寄り「大丈夫ですか?」とゆするが反応がない。
首に指をあて脈を確認するが、手遅れの様だ。少し離れた所にも男性が倒れている。
こちらも脈を確認するが駄目だった。
恐らくこの子供の両親だろう。
「1度に両親を亡くすなんて……兎に角この子だけは助けなきゃ」と久野は燃えさかる炎の中、泣きじゃくる子供を抱え夢中で走った。
炎から抜けた瞬間、青白い光に包まれた。
腕の中の子供が1瞬ニヤっと笑った様に思えた。
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