【目覚め】

1/4
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/164ページ

【目覚め】

看護婦が病院の廊下を歩いていると、ふと落ちている写真に気付く。 「あら誰の写真かしら?」写真を拾うと看護婦は、とりあえずカルテの間に挟んだ。 病院のベッドで、男は眠っていた。久野はダイビングをしていた時の事故以来眠ったままだった。 「久野さん検温しますよ~」と看護婦が近付いた時、カルテに挟んであった写真が寝ている久野の上に落ちた。 その時、久野は微かな光を見つけた。 その小さな点の様な光に近付いて行くと、久野の見た事もない光景が広がった。 気付くと周りは火の海だった。 遠くで子供の泣き声がする。 火を掻い潜り泣き声の方へと進むと女性が倒れている。 その側で子供が泣きながら立ちすくんでいた。 女性に駆け寄り「大丈夫ですか?」とゆするが反応がない。 首に指をあて脈を確認するが、手遅れの様だ。少し離れた所にも男性が倒れている。 こちらも脈を確認するが駄目だった。 恐らくこの子供の両親だろう。 「1度に両親を亡くすなんて……兎に角この子だけは助けなきゃ」と久野は燃えさかる炎の中、泣きじゃくる子供を抱え夢中で走った。 炎から抜けた瞬間、青白い光に包まれた。 腕の中の子供が1瞬ニヤっと笑った様に思えた。     
/164ページ

最初のコメントを投稿しよう!