第1章

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サワサワサワと、道の左右の木々が風に揺れる。 女は足を止め小さく呟く。 「漸くお出ましか」 その緑の瞳に、前方の切株に腰掛ける翁を捉えて。 「若い娘さんがこんな夜更けに出歩くのは感心せんなぁ」 翁は年寄り独特の嗄れた声で、女に話かけた。 いつの間にか月が雲に隠れ、辺りは暗くなっている。 「ああ、あるモノを探していまして。夜中でないと見つからないと言われてこの時間に」 女は若干低めのアルトボイスで、肩をすくめて世間話をする様に翁に答える。 翁は興味を持ったか、更に女に話かける。 「ほぅほぅ。夜中にしか見つからない探しモノかえ?見付かるといいねぇ」 ほっほっほと、翁は人好きのする笑いをする。 「ええ、大丈夫」 女も人好きのする声で答える。 「もう見つけましたから」 女のニッコリとした笑顔を、輝きを取り戻した月が照らす。 瞬間、女から凄まじい殺気が辺りに充満する!
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