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「笑うな、生臭い。私に会うまでに何人食った?」
女は油断なく、構えを崩さずに聞く。
「さてなぁ?餌の数など覚えておらんよ。それよりも娘さん」
翁は惚けた態度で女に提案する。
「アンタを見逃す代わりに、わしの事も見逃してくれんかね?」
無言で女はナイフを翁に向かい投げた!
月の光を受け、ナイフは鋭利な銀の輝きを放ちながら飛んで行く!
翁は大きく跳躍をしナイフを蹴りで叩き落とし、その身を翻す。
その刹那、翁は魔物の本性へと変貌を遂げる。
頭と四肢は黒犬。しかし首回りには白い鬣、背には一対の白い翼。
尻尾は蛇。おぞましい程の鋭い犬歯と鍵爪。
体長は凡そ、六メートル程。
「娘さんや、それが返事かえ?餌如きがわしに楯突きおって。楽には殺してやらん」
不機嫌に、翁だった犬っぽい魔物は女に告げる。
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