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“言いたくない”
握りしめていたハンカチだけを見つめながら、そんな思いに囚われていた。
「そして、負けず嫌いの頑固な処も変わらない」
その言葉に思わず視線を向けた
先程とは違う優しい目をした真
ホッとした
彼に知られなくてすんだから
違う………見られたくない
………ううん……
やっぱり違う
私は真に
真にだけは、負け犬だと思われたくは無かった
“女性だから負けたのだと”
“女性だから…………”
“私が女だったから”
その思いを拭いきれない
そんな自分を見られたくなかった。
そして争いもせず
踏みとどまりもせず
全てを捨てた女
そんな目で…………見られたくなかった。
そんな堂々巡りの思考から
視線を上げさせてくれた彼の言葉
そこには
“もう良いよ”
そう言う彼の笑顔があった
心は瞬く間に浮き足立つ
それを誤魔化すように、真の持ってきた紙袋に手を延ばした。
紙袋の中には、三種類の私が頼んだ珈琲豆が一袋づつ入っていた
“えっ………お土産を頼んだと思ったのだろうか”
一抹の不安と共に彼を見た
- *** -
彼はちゃんと私を解ってたんだ
“色々と試したいだろう”
彼のその心が
涙が出そうに成るほど嬉しかった
「ありがとう、真」
“ありがとう”に
色んな“想い”を詰めこんだ
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