最後の扉を……

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「ね、色々決めたの」 この2カ月を真に話して聞かせた とても綺麗な珈琲カップに出逢えた事 お店のレイアウトも図面を拡げて語った 珈琲に合うお菓子作りを勉強していること 飲食店を開く為の様々な手続きの多さ まるで“ゆっくり話す時間が無かったの” そんな、言い訳をするかのように そして、小さな嘘 “夢を叶えるため”に退職を決めた 彼は笑って全てを聞いてくれた “ありがとう” 穏やかな彼との時間は、疲れきっていた私を優しく包みこんでくれた。 数ヶ月ぶりの彼との会話が楽しくて 窓から差し込む陽差しが緩んだ事に気付いて時計を見た 二時間以上過ぎていた 「真、場所を変えましょう」 その言葉に、彼は自分の腕時計を見た 「あぁ……こんな時間か…… 少し早いけど、夕飯食べにでも行くか」 その言葉を合図に、テーブルに拡げた図面や書類を片付ける 「今日は、この後私の家に行きましょう。 長らく海外だったから和食が良いでしょ? 昨日から準備してあるの 仕上げるだけだから………」 「おっ、海月の手料理か久しぶりだな」 少し皮肉を込めてるのだろう真の言葉を軽くかわす事にした 「そうでしょう でも、ちゃんと“珈琲豆”じゃ無くて“あなた”を待っていたのだと分かって貰えたかしら?」 上目遣いに尋ねると 満面に笑みで返された 「身に染みて感じたよ 海月が“俺を待ちわびて居た”てね」 一瞬にして言葉を失った 誤魔化す様に、片付けた書類の数々をそそくさと鞄に戻し席を立った 「行きましょう…… 貴方の素敵なお土産で、スペシャルな珈琲も付けるわね」
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