最期の約束を果たす日

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ここに来て……良かった そんな事を思いながら、ふと、一つの疑問が頭を過ぎる。 “何故彼女は………” その疑問を胸に、彼女を見つめる 「何時……気づかれたのですか?」 芽生えた疑問を彼女に問うてみた 「何時……私が涼子の……あっ、いや早樹の祖父だと……」 彼女は、私の目を見ながらはっきりと答えた 「最初から……あっ、いえ違うな 最初から、あの日来られるだろうと言うことは知っていました。」 驚く私に彼女は告げた 「最初、お孫さんに聞いてきたとおっしゃった時に、早樹ちゃんの名前を口にされてましたし 何より、少し前に早樹ちゃんに聞いていました。《五月三日に、お祖父ちゃんがくるから》と」 その言葉と共にカウンターに残る私の珈琲カップの横に、少し前下げた最初の赤茶色のカップを並べた 並べれば良く解る 夫婦茶碗のように、しっくり来るペアカップ 赤茶色のグラデーションは、優しい温かさを醸しだし 黒と青のグラデーションは、落ち着いた穏やかさを醸し出している。 長年連れ添った夫婦 理想の夫婦の最後の形 そんな風にも見える、夫婦の珈琲カップ 夫婦茶碗のように、夫婦湯飲みのように大小は存在しない、対の大きさすら これが本来の夫婦の姿に見えた
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