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「今日は、ありがとうござました」
席を立ち、告げる私に彼女は小さく首を振る
「お二人で来て下さる日を、私も楽しみにしてたんですけど………残念です。
又、いらして下さいね」
「はい、私もこのお店の雰囲気は好きです。心が落ちつきます。又、涼子と話をしたいときは度々伺います。
そうですね、少なくとも結婚記念日には忘れず」
そう笑う私に
「奥様がお好きだったのも、その席ですよ」
その言葉と共に、今私が立った席を見つめる
「“扉を背にして、店の中だけが見える
現実から、一歩離れたような落ち着きが貰える
穏やかな、自分の世界を楽しめそうな席”
そう、おっしゃって下さり、とても嬉しかったんです私………」
瞳を細めはにかみながらそう言って
彼女はカウンターテーブルを優しく撫でた。
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