最期の約束を果たす日

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********** 「今日は、ありがとうござました」 席を立ち、告げる私に彼女は小さく首を振る 「お二人で来て下さる日を、私も楽しみにしてたんですけど………残念です。 又、いらして下さいね」 「はい、私もこのお店の雰囲気は好きです。心が落ちつきます。又、涼子と話をしたいときは度々伺います。 そうですね、少なくとも結婚記念日には忘れず」 そう笑う私に 「奥様がお好きだったのも、その席ですよ」 その言葉と共に、今私が立った席を見つめる 「“扉を背にして、店の中だけが見える 現実から、一歩離れたような落ち着きが貰える 穏やかな、自分の世界を楽しめそうな席” そう、おっしゃって下さり、とても嬉しかったんです私………」 瞳を細めはにかみながらそう言って 彼女はカウンターテーブルを優しく撫でた。
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