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「ご馳走様」
赤茶色のカップをテーブルに戻し、席を立つ
「あら……まだ早樹ちゃん来てませんよ」
海月さんが洗い物の手を止めてこちらを見る
「今日は、朝仕事が入ったらしくて、直接駅で待ち合わせなんですよ」
私が答えると
「あら、残念最近忙しいらしくて、暫く顔見せてくれてないのに……」
残念そうに、少しすねた言い方の彼女に
思わず笑いがこぼれた
「大丈夫ですよ」
私は、昨日の早樹からの電話の内容を告げた
《お祖父ちゃん、明日はお祖母ちゃんのお墓参りに行くでしょう。私も行くから
お祖母ちゃんに、昇進の報告をするの
帰りは昇進のお祝いでご馳走様してもらうの良いでしょう
やっぱり最後は、海月さんの珈琲よね》
涼子の月命日に、墓参りに行くことを知っている早樹からの電話は有無も言わせぬデートコースが出来上がっていた。
「あらっ、そうなんですね。
だから忙しいって言ってたんだ……
早樹ちゃん教えてくれたら良いのに」
又、少しすねた顔になった海月さんに私は告げた
「思いっきりゆっくり《おめでとう》を言われる日を楽しみたかったんですよ早樹は……」
私の言葉に彼女は笑う
「うん……なんか、早樹ちゃんらしいかも」
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