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「はいどうぞ、早樹ちゃんお気に入りブレンド」
カウンターの指定席に座った私の前に、白磁にてっせんの花が描かれたカップを海月さんに差し出された。
冬にてっせんの花は時期はずれだけれど、私のお気に入りのカップ
この、紫とも藍色とも言えない色合いが好き
「ありがとう」
何時もはカウンターの中から置かれる珈琲も、今日はお盆に入れて三つのカップが運ばれてくる
「海月、それ時期はずれじゃ無いのか?」
私のカップを見て“真さん”なる人が言う
「良いのよ、お気に入りの珈琲をお気に入りの何時ものカップで飲む。これが常連様の“至福の時”よね」
少し首を傾げて私に笑いかけてくる何時もの海月さんに、私も笑顔で答える
「はい!ほんわかします」
「ねー」
私の言葉に、海月さんは更に華やかな笑顔を向けてくれる。
何時もの笑顔を………
私の視線は、自然と海月さんに珈琲を出されて二つ向こうの席に座ろううとする“真さん”なる人に向けられる。
「じゃ、早樹ちゃんが買ってきてくれたケーキも戴きましょう。早樹ちゃんはモンブランよね、私は大好きなチーズケーキ」
そう言って、今日休憩のおやつにと買ってきたケーキも出してくれた。
ケーキは二つしかない
「えっ、あ……ごめんなさい。海月さんしか居ないと思ってたから……」
私が小さくなって答えると
「良いのよ、真はさっきサンドイッチ食べたところだもんね」
と、真さんに柔らかい笑顔を向ける海月さん
何時もと違う海月さんの笑顔
そんな海月さんの笑顔を見つめて居ると、不意に声を掛けられた
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