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「海月、退職を決めたんだって?」
久しぶりに逢う真
相変わらず、スマートにスーツを着こなしてる
「お帰りなさい。
長期出張ご苦労様でした。
頼んだもの買ってきてくれた?」
質問に答えずに、全く違う問いかけをする私を、何か言いたげに見つめた彼は、諦めたように一瞬肩を上げて答えてくれた
「インドネシアコーヒーだろ。
《トラジャ》《カロシ》スマトラ島の《マンデリン》ご希望の品をご希望の日に届くように手配したよ。勿論、コロンビア、エチオピアには現地迄は飛べませんので、仕事として手配させて戴きました。毎度ありがとうございます。青池様」
態とらしく頭を下げる
世界各国の輸入食材を扱う真の会社は
私の夢の手助けをしてくれる
「ありがとう」
今日一番の笑顔でお礼を告げた
長い足を組んで椅子の背もたれにもたれ掛かる様にして、腕を組んで私を見つめる真
「…………何?」
「……………」
「何?」
もう一度聞いてみた
「海月は、俺よりジャワ珈琲に逢いたかったのかな??
なら………これもどうぞ」
真は、少しふて腐れたように大きめの紙袋をテーブルに置いた
「そんな事あるわけ無いじゃ無い」
これでもか、と、笑顔を添えて続けた
「2カ月もインドネシアに行きっぱなしで、ろくに電話もメールもくれない、真の顔を見に来たんだけどなぁ……」
と、少し斜めの視線で返してみた
彼はすかさず、斜め上に視線を上げた
「…………」
「…………」
彼は徐に視線を私に戻し
「ごめんなさい」
と、頭を下げた
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