最後の扉を……

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- * - * -* - “悔しかったんですもん” その一言を絞り出す様に告げた海月は俯いたまま俺を見ようとはしない そう……解ってたんだ 聞かなくても、海月の葛藤は予想がついていた 一年前、体調を崩して海月のチームを纏めていた人が急遽退職した。 既に動き始めていたプロジェクトは、海月が引継奔走していた 半年前満面の笑顔の海月の報告を鮮明に覚えている 《真、聞いて2社と大口契約が結べたの この後、東北支店でもこのプロジェクトを展開するって……、それにね結城部長が“君にチームを任せても大丈夫なようだね”て言ってくれたの》 リーダーの不在を補い 人員不足の中プロジェクトを成功させた海月の達成感は人一倍大きかっただろう そして部長のその言葉に “やり遂げる達成感”を“現実への反映”と望むのは働く者の嘘偽り無い姿では無かろうか “男”も“女”も 春の人事を楽しみにしただろう 彼女は本当に仕事が好きだから 俺が六月半ばに、インドネシアで受け取ったメールには 【会社を辞めることにした】 それだけが書かれていた “何故この時期に” その思いは直ぐに答を導き出す この時期に 海月が退職を決める理由は一つしかない 彼女は本当に楽しそうに仕事の話を俺にしていたのだから………
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