絶対 見るな

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 通話口の向こうからスマホをいじる音が聞こえた。しばらくして、長瀬はガサゴソ音を立てて通話に戻ってきた。 「いや、そんなアカウントもコメントもないよ、伊藤ちゃん」 「マジで? いや絶対あるはずなんだけど」 「あったとしてもさ、削除されたんじゃない? 通報とかされて」 「ああ、確かに。あれは悪質だったしな」  人の声を聞いたせいか、俺は少しずつ落ち着きを取り戻し始めていた。時計を見ると夜の十二時を過ぎている。もうこんな時間か、と思うとともに妙な眠気がやってくる。 「夜中にごめんな長瀬、俺もそろそろ寝るわ」 「はいはい、次からはもーちょい早い時間にかけてきてよ。また飲み行こうぜ」 「おう、んじゃおやすみー」  あれ、待てよ……。  ……削除対応なんて、こんな真夜中にやるものだろうか?  疑問に思ったが、消えたのであればそれでいい。今はとにかく休みたかった。ベッドに横たわり目を閉じる。まぶたの裏にあの女の横顔がよぎった。  ああ、横顔だけならあんなに美人だったのに。  ウトウトとしたとりとめのない思考のなか、俺は気怠い眠りに落ちていった。
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