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「な、なんだよこれ!」
驚きのあまり、俺はベッドから飛び起きた。恐る恐る横目で、もう一度画像を確認する。
「こいつ、昨日の動画の女だよな。どうして……」
特徴的な目と肌の白さ、それに何よりも皮膚のはがれた右側。信じられないことだが、こんなやつが二人いるとも思えなかった。
ただ、女が這うようにして手を伸ばしている場所が昨夜とは違うように見えた。SNSで見た時は青白い場所にいたが、今日は古臭い階段に手をかけている状態だ。
「この階段、どっかで……あっ!」
俺は寝巻のまま玄関を飛び出して、一階へと続く通路を覗き込んだ。古いアパートの階段は黒い金属製だが、ぼろくなってそこかしこに赤さびが浮いている。
「写真に写っている場所って、まさか……」
一段一段、ゆっくりと音をたてないようにして階段を降る。十二段ある階段の真ん中に差し掛かった時、一段目に妙なよごれがあることに気が付いた。目を凝らす。
階段には、赤い液体と黄色い膿のようなものがわずかにこびりついていた。
「嘘だろ……」
慌てて部屋に戻るとすぐに画像を削除し、メールも消した。アドレスも着信拒否に設定する。
混乱する頭で必死に考える。
SNSから個人情報が抜かれたのだろうか?
いや、それにしたってこんなことをして何になるのか。万が一住所を特定できたとしても、こんな嫌がらせになんの意味もない。
「落ち着け。もうアドレスも拒否ったし、大丈夫。大丈夫だ」
痛いほどに脈打つ胸を押さえて、自分に言い聞かせた。深呼吸を繰り返す。誰かに相談したかったが、こんな話を信じてもらえるとは思えない。笑われるのが関の山だろう。
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