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俺がブランと名付けた少年は、言われたことをする。
口もきけず、言葉もわからない彼は従順で、執務室の壁際に立っているとその存在を忘れてしまう。
「お茶を淹れてきます」
「ああ」
下からの要望書に目を通していた俺は、耳に心地いい声に口元を緩めた。
それから、顔をあげた。
ブランが仮眠室の横にある小部屋へ入っていく。
全体的に細く、小さな背中が消えても俺はそこを見ていた。
戻って来たブランが、ソファーの間にあるテーブルにカップを置き俺を見た。
「お茶が入りましたので、休憩にお入りください」
ブランの口が動き、高くもなく低くもない声が滑り出した。
どういうことだ? 話せないのではなかったのか?
混乱したまま話を聞けば、さらに混乱することになった。
降臨の間に気がつけばいたなんて、それは神子が口にするようなことだ。
だが、歴代の神子の中に男性はいないはずだ。茶色の髪もいない。神子の髪は、全員黒いのだ。
ブランが嘘を言っている可能性もあるし、気付かず迷い込んだだけかもしれない。
だが、太陽はまだその姿を隠したままなのが、どうも気になる。
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