1/衣食住ともうひとつ

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筋肉隆々の防具を身につけた男は、豪快に倒れた俺の脇に手を差し込んで持ち上げ、立たせてから走り去っていった。 ……マジかよ、成人男性を軽々持ち上げたよ。つうか肘ぶつけたんだけど。石畳って最悪だな、めっちゃ痛い。 Tシャツにパーカーという軽装だったせいもある。ジーパンに守られた膝はじんじんしているけどそこまで痛くない。 パーカーを脱いで肘を確認すると、擦り傷から血が滲んでいる。パーカーの肘部分は生地が駄目になっている。 最悪だとため息を吐き、男が出て来た建物を見ればどうやら宿屋らしい。軒先にぶら下がっている看板の絵が、ベッドっぽかったから。 ふらりとその店に入ると、左手にカウンターがあり、右手に階段があった。正面奥には食堂のような飲屋のような場所が見える。 「いらっしゃい、食事かい? それとも泊まり?」 食堂らしき方から出て来た女性にそう聞かれ、俺は答えに窮した。 きっと、たぶん、十中八九。俺の持っているお金は使えない。 これが夢や幻覚ならいいのだが、肘は傷が出来ているし膝は痛いままだ。 ならば自ずと答えは決まっている。 「ここで働かせてください」 まずは職について衣食住確保だ。 俺がこの街に迷い込んでから、すでに一年が過ぎている。たぶん。     
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