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0    俺がブランと名付けた少年は、言われたことをする。  口もきけず、言葉もわからない彼は従順で、執務室の壁際に立っているとその存在を忘れてしまう。 「お茶を淹れてきます」 「ああ」  下からの要望書に目を通していた俺は、耳に心地いい声に口元を緩めた。  それから、顔をあげた。  ブランが仮眠室の横にある小部屋へ入っていく。  全体的に細く、小さな背中が消えても俺はそこを見ていた。  戻って来たブランが、ソファーの間にあるテーブルにカップを置き俺を見た。 「お茶が入りましたので、休憩にお入りください」  ブランの口が動き、高くもなく低くもない声が滑り出した。  どういうことだ? 話せないのではなかったのか?  混乱したまま話を聞けば、さらに混乱することになった。  降臨の間に気がつけばいたなんて、それは神子が口にするようなことだ。  だが、歴代の神子の中に男性はいないはずだ。茶色の髪もいない。神子の髪は、全員黒いのだ。  ブランが嘘を言っている可能性もあるし、気付かず迷い込んだだけかもしれない。  だが、太陽はまだその姿を隠したままなのが、どうも気になる。     
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