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男が案内したのは一階の、窓もない小部屋だった。部屋の中には粗末なベッドがひとつあるだけで、何もない。
「ここは物置部屋だったろう」
「ええ、ですが身元もわからない子供だから、ここでいいと寮監が」
「……そうか」
去っていった男を確認し、ベッドへ近づき目を見開いた。
慌てて照明魔術を使い、少年の様子を確認する。
頭部から出血をしていたのか、髪に血がこびりついている。治癒魔術を使い、青白い少年を抱き上げその部屋を出た。
俺の執務室には仮眠室が隣接されているので、そこへ少年を運び入れお湯を取りに行く。
布で少年の髪についた血を落とし、そうしてベッドへ腰かけため息を吐いた。
身元不明なのは確かだ。俺も適当に過ぎた。
それにしても、あの部屋には何もなかった。服も靴も、本当に何ひとつ物がなかった。
夏はまだいい。だが冬もこの少年は裸足だった。薄っぺらい布きれ一枚ですごしていたが、まさか何も支給されていなかったとは。
仮眠室を出て、浮かれているであろう部下を呼び出し第三騎士団の寮監を調べるよう命令する。
そして、少年に給金が支払われていないことが判明しため息を落とした。
これではまるで奴隷だ。
少年は丸二日眠り続け、俺はその間彼の世話をした。
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