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僕の手は昔のように綺麗になり、靴ももらったので足も痛くない。
食事を毎日たくさんもらえ、体調もすこぶるいい。
窓の外、空は相変わらず重い雲に覆われていて肌寒いが、布じゃなく掛け布団があるので睡眠もしっかりとれている。
生活が楽になり、体調が戻った僕は口を開いた。
この人は、僕の世話をしてくれたから。いつまでも無視するのはよくない気がした。それに僕に、いっぱい話しかけてくる。
「お茶を淹れてきます」
サミュエルはああ、と返事をしたので、僕はお茶を淹れに向かった。
カップを手にテーブルへ行き、こちらを見ているサミュエルに小首を傾げる。
「お茶が入りましたので、休憩にお入りください」
「ブラン?」
「はい」
「話せるのか?」
「はい」
サミュエルは目を大きく開き、口を開閉してからソファーへ移動してきた。
座った彼の隣に座り、お茶を味わう。
「……あー、どういうことだ? 最初から話せたのか?」
「はい」
「何故、今まで話さなかった」
サミュエルが僕をジッと見ているので、カップを戻して視線を受け止めた。
「必要がなかったので」
「何故、……お前は、誰だ?」
「僕はブランと呼ばれています。サミュエルの従者ということになっています」
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