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「いや、違う、それは俺が勝手につけた名前だ。本当の名前を言え」  サミュエルが真剣な顔でそう尋ねるので、僕は自分の元々の名前を答えることにした。 「光貴です。椎名光貴」 「コーキ?」 「はい。ですがブランがいいです。サミュエルがつけた名前のほうがいいです」 「君は、……待ってくれ、君は何故あの日、あそこに入れたんだ?」  サミュエルの表情が強張っていくのを眺め、あの日とはこの世界に来た日の事だろうとひとつ頷く。 「気がついたらいました」  サミュエルは髪をかきあげ天井を仰いだ。 「まさか……いやありえない。神子は黒髪の女性だ。どういうことだ……」  ぶつぶつと独り言を漏らすサミュエルを放って、僕はお茶を口にした。  僕は最初から彼らの会話がわかった。でも僕は間違いのようで、必要とされていなかった。  不必要な僕は、何も知らなくていいのだ。  今までも、これからも。  ただサミュエルが一生懸命ジェスチャーをするのが、彼の負担になっていると判断した。だから、僕は言えばわかると伝えたに過ぎない。  サミュエルはそれから、僕にもの言いたげな視線を向けてくるようになった。だけどそれは、僕の勘違いかも知れない。     
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