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僕はサミュエルに言われたことをすればいいだけなので、相手の思惑など考える必要はないのだ。
「ブラン、字はわかるか」
「はい」
「計算はできるか」
「はい」
部屋の片隅で立つ仕事の他に、僕はサミュエルの仕事を手伝い始めた。
予算表の確認など、些細なものだったが。
ある日サミュエルから、お金をもらった。給金だと言われたが、そのお金の価値が僕にはわからない。
見たこともない硬貨を、与えられている部屋の机に並べておいた。初めての私物だ。
「ブラン、買い物に行こう」
「はい」
サミュエルは珍しくラフな格好をして、僕の部屋を覗いてそう言ってきた。
今日は休みだと言われていたので、僕は一日部屋にいる予定だったが立ち上がる。
何も持たず部屋を出ようとしたが、お金を持てと言われたので机の硬貨をポケットに入れた。
サミュエルは背が高く、足が長い。いつもは建物内の移動だったので気にならなかったが、城壁を出てしばらくして、僕は彼を見失った。
始めて歩く街の中は、石畳で道幅が広い。建物は木造と石造とあり、ファンタジーだと思った。
通り過ぎる人たちの服装は、男性はシャツとズボンが多く、女性は肌があまり出ないシャツとスカートが多い。
時々ジャケットを着ている人もいたが、そういう人にはお付きの人がいた。
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