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しばらく行くと人が増えて、僕はその流れに乗り適当に歩いていた。気がつくと裏通りに入ったのか、道幅が狭くなった。
その狭い道の両端には布を広げ、品物を並べている人たちがいた。
ガラクタのようなそれらを覗き、フリーマーケットみたいだと思った。
陽が沈んできたので、僕はお城へ向かった。城壁のところで、僕は中に入れないことを知った。
仕方がないので、また街中へ戻る。冬でなくてよかったが、どうしようかと建物に背中を預け考える。考えるのは久しぶりな気がした。
家もなく仕事もない僕は、浮浪者になるのだろう。
積極的に仕事を探す気もないし、宿を探す気もない。
では、朝になったら街を出ようか。それともこのままここに立っていれば、そのうち死ぬだろうか。
通り過ぎていく人たちを眺める。みんな背が高く、体格もいい。千鳥足の人が増え、街灯のない街は徐々に静かになっていく。
建物から漏れる明りだけが、夜道を照らしていた。
「ブランっ」
しゃがんで寝ていた僕は、腕を掴まれ目を覚ました。見上げるとサミュエルがそこにいて、僕を立たせて抱き上げた。
「すまない、君に身分証がないのを失念していた。見つかってよかった」
怪我はないかと聞かれ、返事をする。
サミュエルは僕を抱き上げたまま歩き出し、城へと戻ることになった。
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