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むしろ邪魔だと、そう言われ続けていた。
最後の最後に求められた。それを嬉しいと思ったけど、その気持ちはするりと僕の中から抜け落ちて行った。
一方的に求めても、それは苦しいだけだから。
僕に絡まる何かに謝った。
ごめんね。僕にはもう何もないから。何もない僕は必要ないでしょ?
絡まる何かが僕を包み込む。まるで僕のことを必要だと言うように。
そうか。じゃあ、空っぽの僕でもいいなら、使っていいよ。
そこで意識が、ぶつりと切れた。
目を覚まし、僕はベッドの上で上半身を起こした。
ずいぶんと、昔の夢を見たような気がする。
ベッドから降りて、壁にかけておいた貫頭衣を身につけて狭い部屋を出た。
裸足には堪える寒さだと思いながら、廊下を進み外へ出る。
薄っぺらい服を馬鹿にするように、冷たい風が通り抜けていく。
今日も寒いと、重たい灰色の雲で覆われた空を見上げた。
誰も彼もがどんよりとしたこの重い空気にため息を落とし、寒さに震え口数が少なく苛立っている。
物置小屋から桶を取り出し、僕は水汲み場へ行き冷たい水をすくう。小さな桶でも、水を入れればそれなりに重い。
それを持ち上げ、僕は廊下へ戻り床を磨きだす。
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