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「昔です。こちらに来てからは染めていません」
「どういうことだ?」
「わかりません」
ザッと湯をかけ流し、ブランは立ち上がり浴槽へ向かっている。
浴場にいる部下たちの視線が彼に向かい、その白くて華奢な肢体にみんなが目を逸らそうとしている。
まあ、男所帯だからな。
それでもなんとなく不快で、その後を追い部下たちの視線を散らす。
「元々はどんな色なんだ」
「黒です」
「……そうか」
「はい」
額を覆い、どういうことだと困惑する。
降臨の間に気がついたらいた少年は、元の髪色は黒だと言う。
姿を見せない太陽と、無表情の少年。
もしや、この子も神子だというのか? ではこの国は、神子を不当に扱い今も……。
「君は、今の生活はどうだ? 他にしたいことなどあるか?」
ブランは上気して血色の良くなった顔を俺に向け、小首を傾げた。その仕草が小動物みたいで、愛らしくて微笑んでしまった。
ブランに書類を任せ、俺は第二王子の元へ向かった。
太陽はまだ出ておらず、城の空気が少し硬くなっている気がする。
魔物はまだ活発で、俺たちの仕事も忙しい。
「殿下と神子はどうだ」
「仲睦まじく。新しいドレスを仕立てて、宝石も贈っている」
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