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太陽がその姿を隠して数年、城下町では諍いが頻発し、街道では魔物被害が増加していた。
誰も彼もが空を見上げては肩を落とし、恨みがましく城を睨みつけては悪態を吐く。
神子の不在。それは王族への不信となる。
神子が亡くなり数十年が経ち、いまだ現れないのは今代の王が悪しき存在だからだと、口さがない者たちは噂する。
国民の不満は、雲の厚みに比例して増大していく。
太陽を隠す雲のせいで、作物の実りが悪い。それでも魔術師たちが田畑へ赴き、魔力を流してなんとかしのいでいる。
足りない分は輸入に頼り、財政は圧迫されている。
陛下だとて、この状況を憂いている。城の敷地に建つ降臨の塔で、陛下は毎日祈りを捧げていた。
だが、神子は現れない。
心労で体調を崩した陛下の代わりに、最近では殿下が祈りを捧げている。
継承権はすでにないが、第三王子である俺や第二王子も毎日足を運んでいた。
一向に現れない神子に、殿下が苛立たし気に塔の中へ入る。
今日こそは、今日こそはと祈りを捧げるのは精神を苛む。もちろん俺も、焦燥を感じていた。
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