2

1/7
前へ
/209ページ
次へ

2

0    太陽がその姿を隠して数年、城下町では諍いが頻発し、街道では魔物被害が増加していた。  誰も彼もが空を見上げては肩を落とし、恨みがましく城を睨みつけては悪態を吐く。  神子の不在。それは王族への不信となる。  神子が亡くなり数十年が経ち、いまだ現れないのは今代の王が悪しき存在だからだと、口さがない者たちは噂する。  国民の不満は、雲の厚みに比例して増大していく。  太陽を隠す雲のせいで、作物の実りが悪い。それでも魔術師たちが田畑へ赴き、魔力を流してなんとかしのいでいる。  足りない分は輸入に頼り、財政は圧迫されている。  陛下だとて、この状況を憂いている。城の敷地に建つ降臨の塔で、陛下は毎日祈りを捧げていた。  だが、神子は現れない。  心労で体調を崩した陛下の代わりに、最近では殿下が祈りを捧げている。  継承権はすでにないが、第三王子である俺や第二王子も毎日足を運んでいた。  一向に現れない神子に、殿下が苛立たし気に塔の中へ入る。  今日こそは、今日こそはと祈りを捧げるのは精神を苛む。もちろん俺も、焦燥を感じていた。     
/209ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1049人が本棚に入れています
本棚に追加