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魔術師が降臨の間を魔力で満たし、王族の祈りが神へと届いたとき愛し子、つまり神子が現れる。
神子の不在が長引けば長引くほど、国は荒れていく。
幼いころから聞いていたおとぎ話は事実で、五十年近く神子がいない我が国は疲弊している。
降臨の間に魔力が満ち、俺たちは祈りを捧げる。どうか神よ、我らに神子をお授けください。どうかこの国をお見捨てになるな。
降臨の間の魔力がふっと消え、顔をあげるとそこには少年がいた。
何故少年が、と呆気にとられる。神子は女性のはずだ。男性が現れたことなど記録されていない。
「何者だ! ここは神聖な場所、お前のようなみすぼらしいものが入るなど、許されることではないぞ!」
激高した殿下の叱責に、しかし少年は無反応だった。
表情を動かすこともなく、辺りを見回していた。
普段はけして暴力的ではない殿下だが、届かぬ祈りにいら立ちが爆発したのだろう。
少年を殴り飛ばし、牢へ入れろと吐き捨てて塔を出て行ってしまった。
殿下に殴られた少年は、ぴくりとも動かず倒れている。
まだ小さい子供が、大人に殴られたのだ。魔術師たちが慌てたようにその少年へ声をかけたが起きる気配がない。
俺は降臨の間に入り込んだ罰は必要だろうが、手加減なしで殴ることもないだろうと苦い気持ちになった。
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