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BARは他愛もない話からはじまった。
向かいに座った西谷が話し始める。
「最初青木さんが結婚してるって気が付きませんでしたよ。」
「そういえば、前に『青木さんって一人暮らしなんですか』って聞いてきたねー。莉子さんから聞いて知ってると思ってたよ。」
「いやいや、そんなことまでは話しませんよ。しかも青木さん結婚指輪してないじゃないですか。全然わからなかったですよ。なんで指輪しないんですか?」
理沙子は自分の左手を見ながら、
「んー…。まだ元彼が好きだからかなぁ」
と答えた。
西谷は笑いながら崩れ落ちた。
漫画でよくあるような見事なコケに、理沙子もつられて笑った。
「一ヶ月、私の隣で話を聞いていたらわかるでしょうー」
「まぁ薄々。課の皆さんもすごいですよね!当たり前のように青木さんの元彼の名前も職業も青木さんが引きずってることも知っていて、普通に会話してるんですから。」
確かにそうだ。
理沙子が元彼を引きずっていることは、結婚前から課の人間の知るところであった。
だから結婚を発表したときも相当驚かれ、
「えっ、つい昨日も元彼が忘れられないって言ってなかったっけ?えっ?」
と課内を混乱の渦に巻き込んだ。
結局、昨日と言わず今でも毎日のように引きずっているわけだが。
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