○月※

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いつものカラオケのいつもの部屋。 西谷は隅に座り、手を広げる。 「人肌をあげましょうか。」 理沙子は少しふくれて、 「そんな上から目線は結構ですー」 とそっぽを向いて言う。 西谷は仕方ないな、というように笑いながら 「俺が欲しいから。こっち来て。」 と、もう一度手を広げて手招きをする。 理沙子は少しふくれた顔のまま西谷の腕に収まった。 人肌は安心する。 できればもっと抱きしめていて欲しい。 そんな気持ちを振り払うように、努めて冷静に 「歌、歌わなきゃお金が勿体ないと思いますー」 と、リモコンに手を伸ばすフリをする。 「…そうだね」 と西谷は、理沙子の伸ばした手をとり顔を近づけた。 軽く口が触れ合う。 一度離して、至近距離で目を合わせる。 もう1回をねだるように、口を少し突き出す。 2人は目を合わせ笑いながら、今度は激しく口づけ合う。 息が交じり合う。 声を含んだ吐息も交じり合ってきた頃合いで、理沙子は唇を離した。 目はまだ離れない。 口には出さないけれど、 好きだよという気持ちを込めて 西谷の頭をわしゃわしゃと撫でた。 西谷は理沙子の手を払いながら、 拗ねた少年のような顔でもう一度唇を合わせてきた。今度は軽いキス。 すぐに顔を離すと理沙子の目を見ながら 「友達、友達」 と笑いながら言った。 「うん、そりゃあそうだよ。友達友達」 大好きだよ と心で言いながら、理沙子は西谷の頭をもう一度撫でた。
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