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7月1日朝。
異動の大荷物と共に、人懐っこい顔で現れた眼鏡の男性の名は西谷雪哉と言った。
俳句と剣道、弓道が趣味の古風な男性。
朝、辞令を受け取るために莉子が同じ棟に来ていたが、西谷が持ってきていたメモ帳代わりの俳句帳を散々いじって遊んでいた。
莉子にいじられながらも、人の良さそうな屈託のない顔で笑う西谷を見て、理沙子は安心をした。
理沙子はふと、莉子との仲の良さをアピールしたくなった。
莉子に抱きつき、
「行かないでよ~、いつでも戻ってきて良いからね!」
と、新しい課のある棟に向かおうとする莉子を引き留め
ずっといちゃいちゃして見せた。
西谷はその光景を見ながら、苦笑いを浮かべていた。
理沙子のこの判断は、後々理沙子自身を苦しめることになるのだが
この時の理沙子は知る由もなかった。
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