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 研究室で実験を済ませてから行ったので、アパートに着いたのは七時過ぎになった。 辺りは真っ暗。  建物は、格安のわりにそこまでボロくなかった。 「あーここかぁ」  週二で家庭教師のバイトをしているんだけど、そのときに通る道沿いのアパートだった。 そういえば見覚えがある。  階段を上って部屋の前まで行き、インターフォンを鳴らした。 格安物件のせいか、音がひずんでて、不協和音になってた。 「はーい」  AとJがお出迎えしてくれた。 今はシラフっぽい。 Aが、なぜかすごくほっとした顔をしたのを覚えてる。 「M、夜ごはんまだなんだよね?」 「うん、コンビニで買ってきたから中で食べさせて」 「お菓子でも出すね」  ワンルームの部屋に入って、私だけ総菜パンを食べることにした。 二人は済ませたらしい。  部屋の中は、想像してたよりもずっと綺麗だった。 リフォームしたらしい。  部屋の真ん中にピンクのラグが敷かれていて、その上に白い円卓があった。 それを囲むように三人で座りながらお喋りする。 「結構キレイだねー!」 「うん……」 「これで月二万とか、めっちゃお買い得じゃない?」 「そうかな……」  もう、ビックリするくらいAの反応が悪い。 Jは我関せずというか、無表情のまま完全に一人の世界に入ってる。  ケンカでもしてた? と思ったけど、直接訊くのも気まずい。 どうしたもんかなぁと思いながら一生懸命話題を振った。今日の学校の話とか。 Aは気を使ったみたいな苦笑いをしてるし、Jは一向に反応せず。 「J、昨日だいぶ飲んだんだ? 学校まるまる休むとかびっくりだよー」  話を振っても、やっぱりテーブルを見つめたまま反応なし。もう心折れそう。  どう考えてもいつもの様子と違うので、恐る恐るAに訊いてみた。 「どうしたの……? なんかあった……?」  人間ここまで顔色すぐに変わるんだな、ってくらいにAが青ざめた。 小さな声で、つっかえつっかえ喋ってくれたけど、要約するとこういうことらしい。
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