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「部屋に来るまでは普通のJだった」 「夜の十二時ごろ、喋ってたら電気がいきなり消えた」 「すぐに点いたから大したことない停電なんだろうけど、そのときからJの様子がおかしくなった」 「話しかけても反応しない。ずっとこうしたまま動かない」 「けど私が部屋を出ようとすると凄い勢いで邪魔する」 「学校にも行く気だったけど行かせてくれなかった」 「Mちゃんが来てくれて本当に助かった。どうしよう」 「手を掴まれてひどいアザができた」  Aが見せてきたけど、本当に手首のところにくっきりと手のあとが残ってた。  なんか普通じゃない…… と思って戸惑ってると、案の定Aが爆弾を落としてくる。 「ここ事故物件だからかな……」 「え……」  だから安かったのか、って悪い意味で納得してしまった。 「どんな事故?」 「変死? とかなんとか……でもちゃんとクロス張り替えたし、防犯的には問題ないって言われたから」  微妙にズレた答えでげんなりした。  さてどうしようかな、と思いながら何気なく視線をAから外した。 そうすると自然に、Jも視界に入ってくる。  J、私らをガン見してた。  変な声出たと思う。 だって今まで机ばっかり見てて魂抜けたみたいになってたのに、気が付いたら、目玉がこぼれそうなくらい目を見開いて、歯を食いしばってて、両手を机に乗せたまま身を乗り出してて、その両手もぶるぶる震えてたから。 「え……J……?」  なんかの病気? 発作? と混乱しつつ、声をかける。 だけど返事無し。  よく見ると黒目が尋常じゃない速さで痙攣してた。 「イィ、イイイ」みたいな変な声出しながら。  Aは震えながら、私の服の裾をガッチリ掴んだ。 なんかあれば私を盾にするぞ、みたいに後ろに隠れてる。  いやあんた友達盾にする気? 住んでんのAなのに? と思いながら、不安なのでとにかく喋る。 「ぐ、具合悪いのかな? とりあえず救急車呼ぶ?」  今すぐ逃げたいけど二人とも放置するのも気が引けるし、とにかく第三者に来てほしい、と思ってスマホを取り出した。  その瞬間、凄い力でAに叩き落された。 「え、な、なんで?」 「……Jが怒るから……」  何それ、と思ってJの方を見た。  顔がすぐ目の前にあった。
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