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 いつ移動した?  というか足音は?  混乱しながら逃げようとした。 けど、後ろにAがくっついてて動けない。 「どいて! どいて!」  Aは完全に私を盾にしてた。 動けないように両手ごと身体を掴んで、頭を背中に押し付けてた。  何自分だけ助かろうとしてるんだ最低! と叫びたかったけど、焦りすぎて声が出ない。  ほんの十センチ先くらいにJの顔がある。 その顔色が、ものすごく悪かった。  土気色で、全体に紫の網目みたいな、血管の跡みたいなのが浮かび上がってる。  目もおかしくて、黒目はバラバラの方を向いてた。 白目は白目で、小さな虫みたいな細長い黒いものがうようよしてる。  目の表面にいるわけじゃなくて、薄い膜の下みたいな、白目の中に入り込んだ黒い何かが透けて見えるような感じで、それが絶えずウネウネ動いていた。  それが痛いのか知らないけど、Jはずっと呻いてる。 「エエ……エエエッ……」みたいな、妙に甲高くて、上手く文字にできないけど喉の奥が詰まったような声だった。  顔を逸らして逃げたいのに、後ろからはがっちりAが押さえつけてくる。 「バカ! どけ! 来るなー!」  私はもう半狂乱で、単純な単語ばっかり叫んでた。  ムカつくのと怖いのとで、足とか手とか動かせる範囲でAをガンガン攻撃するんだけど、全然こたえてない。  なんでか知らないけどJに殺されると思い込んでて、必死に逃げようとしてた。 そのとき、いきなり電気がチカチカして、フッと消えた。
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