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「うわああああああっ!」
絶叫した。
全身で暴れまくって、もう無我夢中でAを振り切る。
暗い中で足をガンガンぶつけながらドアの方向に向かって、ドアノブに必死で飛びついた。
玄関のドアを開けた瞬間、後ろで電気がつく。停電が直ったらしい。
ドアも締めず、靴も履かずに走って逃げた。
いつもバイトに行くときに通っていた目の前の道路にまで出ると、車もいるしコンビニも近いし、当たり前だけど夜なのに真っ暗じゃなくて、それがすごく嬉しかった。
道路わきにへたり込んで、恥ずかしながらもう一度泣いた。
「あ、M」
「なにやってんの?」
驚いた声がして振り返ると、AとJだった。
このときはまださっきの余韻が残ってて、Jは怖いしAは腹立つしで妙な気持ちだった。
どう話していいか分からないけど、さっきまでAの部屋にいたことを話す。
二人はかなり驚いてた。
Aは信じてくれてるみたいだけど、Jは私の話を半信半疑な感じだ。
「幽霊って言っても、Aしか見てないよ。停電があったくらい。あと、部屋を出るときにちゃんとカギ閉めてたよ?」
いやあんたらが開けて私を入れたんだよ……と言いたいけど、あれはこの二人じゃないらしい。
結局私も靴を取りに行かなきゃいけないし、三人で部屋に戻った。
カギは開いてたけど、部屋は綺麗だった。私が暴れた感じはない。
Aは完全におびえてて、結局私の家に泊めることになった。
そのあと、Aはすぐに引っ越した。
Aと二人きりになったとき、どうしても気になってたので訊いてみたことがある。
「なんで宅飲みするって話のとき、Jそっちのけで私だけ誘ったの?」
Aはすっごい難しそうな顔をしてた。
「わかんない。なんかそのときは、絶対Mをあの部屋に連れてかなきゃいけないと思ったんだよね」
心底ゾッとした。
どうしてかは分からないけど、私狙われてるんだ……と思った。
Jに言うと笑われるだろうなと思って次の日Jに言ったら、案の定笑われた。
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